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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

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世界はスタグネーションへ

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 ニューヨーク在住のエコノミスト、熊坂博士のCQMレポートによると、米国の景気の落ち込み(スローダウン)はかなり深刻な模様だ。21日発表された5月の中古住宅件数は481万件と3.8%も落ち込んでいる。家計は借金を返済し、貯蓄に勤しみ(デレバレッジング)、個人消費が伸びていく状況とはいえない。住宅市場の本格的な回復は、早くても来年2012年後半から2013年にかけてと見込まれている。

 21日に参加した大手ヘッジファンド、ジョン・ポールソンの新しいゴールド・ファンドの運用者は米国のマネーサプライの伸び(量的緩和=QE2)に言及し、連銀にだぶついている余剰資金がインフレを起こす要因だと説明した。よって、インフレに対してドル資産のヘッジとなる金、ゴールド・ファンドを売り込むというロジックが成り立つわけだ。

 GDPの7割近くを占める個人消費がいまだに弱く、失業率が高く、インフレ懸念、しかも、さらなる緩和をしなくても市場には資金がだぶついている。クライブ・クルックはFT記事“America flirts with a fate like Japan’s”(20日付)で、製造業の空洞化でスキルの高い労働者が減り、教育レベルの低下など米国経済の構造的脆弱さを指摘している。

 このところのFT紙では、米国と中国の景気低迷(スタグネーション“Stagnation”)が話題で、米中は日本の「失われたX年」を追随するのかといったテーマの記事が目につく。マーティン・ウルフは”How China could yet fail like Japan”(15日付コラム)で、日本の賃金カットと過剰信用によって家計部門から企業部門に所得移転が起こったことをあげ、中国もまた同じ轍を踏む可能性も示唆している。

 米国では、リーマンショック後、国民の税金がウォール街にばらまかれ、そのおかげで金融システムは保たれたとするものの、実体は改善されていない。政府の庇護のもとに不当にも守られた業界は衰退する。特に金融は政府との癒着を持たない、純粋な信用創造に基づく、厳粛な資本主義のルールにのっとっていたはずだ。その掟を破ってしまったウォール街は衰退か、根本的な改革による生き残りかの選択を迫られるだろう。

 ブルンバーグ記事「衰退する米金融業界」(20日付Global Finance)によれば、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン、シティグループなど大手米銀行の第2四半期の収益は減少が予想され、すでに投資家は金融株を敬遠している。早くもウォール街でレイオフが始まる見込みだ。

 再び規律とモラルを重んじるウォール街に戻るには、どうすべきか。これまでの金融緩和と自由主義経済を支えてきた金融の産学複合体(ウォール街、FRBと政府、学者)、その象徴としての「御三家(ルービン、グリーンスパン、サマーズ)」とその残党に代わり、MITロー教授(Andrew Lo)やシカゴ大学ラジャン教授(Raghuram Rajan)のようなまともな理論で武装した若い世代が指導権を取るべきだと考える。

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