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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

「富裕バブル」が終わるとき

1990年代から米国ではバブル生成と破たんというマーケットサイクルが繰り返されている。直近のバブルは、2009年から始まった中央銀行相場による「富裕バブル」である。リーマンショック直後から先進諸国の中央銀行は経済と金融を大恐慌から救うために大規模な量的緩和を実施し続けた。

「ヘリコプターマネー」(上空からヘリコプターで紙幣をばらまくような緩和策)のおかげで市中には通貨量が増え、投機筋が上げ相場を見込んでリスクオン(リスク選好型)になることを予想し、市場関係者はそのトレンドに乗ろうとする。こうして株や不動産などの資産価格が上昇し、資産家は手持ちの資産価値が増えるので気前がよくなってお金を使い始める。そこで、富裕効果が実体経済を刺激し、個人消費が伸び始め、生産活動が活性化し、景気が上向くというイメージである。こうした資産バブルを景気が後追いするというパターンがいつまで有効なのだろうか。

現在、米国の企業決算はエネルギーセクターを除けば好調で、堅調な雇用統計も後押しして富裕効果が実体経済に好影響を及ぼしているようだ。7月のFOMCでは利上げを見送り金利を据え置いたものの、9月のFOMCでは利上げ実施の可能性が出て来ている。英国のEU離脱により世界景気の落ち込みが懸念され、加えて供給過剰の見込みから直近、原油安となっているが、米国株式市場は原油市場の下げに関係なく、上昇している。

ところが、元FRBエコノミストのダニエル・ソーントンとジョー・カーソンの両氏は、金融市場では既に富裕バブルがピークに達していると分析している。両氏のレポートによれば、2009年の景気後退期から米国の株価や不動産価格は倍になり、持ち家や株式などを保有する世帯当りの金融資産価値も倍増し、可処分所得の6.4倍となっている。この水準はリーマンショック直前を超える高さである。

富裕バブルが景気に先行し、実体経済が後追いするというパターンが繰り返されるとなれば、間もなくバブルは破たんし、景気がタイムラグを持って来年には落ち込むというシナリオが予想される。バブル破たんのトリガーは何か。

“Wealth Bubble In ‘Scary Graph’ Flashes Warning About Future U.S. Downturn”
(Bloomberg 7月22日付)
http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-07-22/ex-fed-official-worried-about-bubbles-warns-of-u-s-downturn

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筆者は国際金融市場の現場で資金のやり取りと決済状況を注意深く見守っている。国際的な緊張が高まり、テロ行為が横行するなか、反マネーロンダリング等の疑いで国際間の決済に遅延や凍結のリスクが高まっている。資金の流れが滞り、物流に支障が出れば、貿易国家である日本はその影響を直に受けるだろう。ここ6-12ヶ月、経営者は手元資金や流動性に注意を払う必要がある。

マネーはクリントンへ

さて、米大統領選では、かつてニクソン大統領を辞任に追い込んだ「ウォーターゲート事件」をさらに稚拙にしたトランプ候補の「ロシアハッキング奨励事件」が起こっている。これはトランプ陣営・共和党にとって致命的である。

 ことの発端は、クリントンとサンダース候補が指名争いをしたときに、中立的立場にあるはずの民主党全国委員会幹部が「ユダヤ系サンダース氏は無心論的」だと個人的に不利な言及をし、クリントン氏を優位に導こうとしたことだ。この内容を記したメールがwikiリークスを通して暴露され、幹部は辞任をした。このハッキングはロシアからされたことが報じられている。

そして、トランプ氏はクリントン氏が国務長官在職中に公務で私用メルアドを使用した際の中身に関しても、ロシアにハッキングを促すような発言をしたのだ。

これは前代未聞である。いかにトランプ氏が人気を得ようが、彼自身が3年前にモスクワで行ったミスユニバースでロシアの資本家の協力を得たこと、納税申告書を公開しないことへの疑念は高まる一方である。

BBC記事(7月28日付)トランプ氏とプーチン氏のキスシーンがショッキング。
US election: Trump ‘encourages Russia to hack Clinton emails’
http://www.bbc.com/news/election-us-2016-36907541

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