グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

出口を出たアメリカに道筋の見えた欧州、さまよう日本。

FRBは、12月14日に予想通り0.25%の利上げを実施した。米国経済が穏やかなペースで成長し、雇用環境も改善されていると言及し、さらに、次期政権が財政を拡大することから、「トランプフレーション」でインフレ圧力が強まると来年の利上げペースは予想よりも速くなるだろう。FOMCでは2017年の成長率を2.1%、インフレ率1.8%と見込んでいる。

 このように、米国は金融緩和策の出口から完全に出たことになるが、欧州ではまだ道半ばである。8日にECBは金融緩和を持続するとしたが、債券購入枠は800億ユーロから600億ユーロに縮小され、また、今後9ヶ月の延長と期限を示した。出口がうっすらと見えてきたようだ。しかし、2017年にはドイツ、フランスで国政選挙があり、これまでEU統一を支えてきたメルケル首相が再選されるかどうかなど政治の不安定化が懸念される。イタリアやギリシャの金融危機がいつ再燃してもおかしくない状況では、強いリーダーシップなしにユーロ圏分裂が始まるのか、欧州統一の理念を試される年となるだろう。

 欧米に対して、日銀の緩和政策には出口が全く見えて来ない。量的かつ質的緩和策、マイナス金利、イールドカーブコントロール、債券やETF購入の続行など盛りだくさんのまま、政府は来年衆院選を実施し、さらなる財政支出の拡大に向かうだろう。そうなると多額の財政赤字増加が見込まれるが、そのウラでは債券価格の下落を下支えするために日銀がさらに購入を増加するという悪循環が起こっている。

 米国では債券の利回り上昇からドル高、株高が続いている。日本ではこれに引きずられて円安・株高が続いてきたが、現状はどうか。師走に入り、中小企業から「景気がいい」という声は聞こえてこない。ある中堅住宅メーカー社長は「マーケットはすでに先食いされている」と語り、住宅のような裾野産業ですら先行きは不透明である。庶民は年末も買い控え、生活防衛モードに入っている。実体経済の成長を伴わない相場上昇は、じつにふわふわしていつ調整が来てもおかしくない。

 さて、ドル高の背後には「再び米国を偉大な国家にする」というトランプ・スローガンがある。次期政権の閣僚人事をみても、マティス国防長官、ケリー国土安全保障長官、フリン大統領補佐官といった軍幹部出身者が名を連ねる。米国のソフトパワーはオバマ大統領とともに去り、ハードパワーの時代に切り替わる。また、エクソンモービルのティラーソン会長兼CEOが国務長官に抜擢されるなど、こうした人事から米国が再び強力な軍産複合体として復活する様子が見えてくる。

 トランプ新政権のリアリティに日本はどう立ち向かうのか。年明け、トランプ新政権がスタートし、今後の米中金融戦争の行方は円ドル相場へ大きく影響しそうだ。

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