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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

2019年末のマーケットに残るリスクまとめ

 今年も残り少なくなった。これから年末にかけて重要なイベントが続く。

サウジアラムコの評価額は砂上の楼閣?リスク

 まず、11日にはサウジアラムコがサウジ国内で新規上場を果たした。時価総額が約200兆円である。

 FT記事 ”Saudi Aramco IPO: sand paper”は、「評価額はサウジ支配者のムハンマド・ビン・サルマンの切望値で、マイクロソフトの2倍だが、本当にその価値があるのか」と、砂上の楼閣のような株式と評している。当面はサウジ国内のみで取引されるので、世界の投資家がいつまで”sand paper”への関心を持ち続けるかはわからない。仮にサウジが原油を減産するなどして価格を吊り上げようとすれば、サウジは原油からの収益もアラムコ株からの収益も失いかねない。

参考記事:Saudi Aramco IPO: sand paper

 また、11日には今年最後のFOMCが開催され、予想通り金利は据え置きとなった。利下げは来年もこのまま据え置きとなる見通しだ。

ブレグジットリスク

 12日には、英国で総選挙がある。選挙は水ものだ。予想どおり保守党が僅差で勝利しても過半数に届かなければ、再び議会でブレクジットの将来が決まらず、来年1月末までの「秩序ある離脱」が出来るのかどうか。政治は再び不安定化しそうだ。

米中貿易摩擦リスク

  12/15日は、米中の追加関税延期のデットラインである。 米中貿易協議「第1段階」の交渉は延期になるとみられ、追加関税のデッドラインも延期されそうだ。トランプ大統領は「まだ決めていない」とし、今後の発言が注目される。

北朝鮮リスク

 そして、25日には北朝鮮が「クリスマスプレゼント」を送ると公言している。目下、国連では米国の要請で安保理事会が開かれ、米が北朝鮮を牽制している。

 北朝鮮の専門家、三村光弘氏によれば、米国が中国と北朝鮮の地銀のコルレス口座を使えなくするなど「金融制裁」を強めている。ドル決済を止められ、物資が先細り、北朝鮮は追い詰められている。米国がここで手を緩めることはない。北朝鮮はどのような挑発に出るのか。

レポ市場の金利高騰リスク

 年末にかけてもう一点、リスクがある。レポ市場での短期金利が年末で再び急騰するリスクである。9月にレポ金利が急騰し、市場はひやりとした。FRBは年末の資金需要の逼迫に対して短期市場の混乱に警戒している。

 このリスクについては、国際決済銀行(BIS)もヘッジファンドの動向を警戒している。巨大ヘッジファンド、ロングターム・キャピタルマーケット(LTCM)がレポを使い、高いレバレッジをかけていたことが、1998年のロシア危機で破綻の際に追い込まれた。LTCMと同じような危機が、年末の短期市場逼迫でヘッジファンドに再び起こるのかどうか。まだまだ年末まで市場リスクについては油断できない。

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