グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

それでも世界は成長を続け、日本は?

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 オサマ・ビンラーディンの死、そして先週のコモディティ市場の急落、円高など、ゴールデンウィーク(GW)の間に世界ではいろいろなことが起こった。

 オサマ・ビンラーディンは既に過去の人になっていた。それよりも、先週木曜、コモディティ・バブル破たんかとびくっとした。ECBの利上げなし、予想を上回った米国の失業申請者件数の発表から、欧米の実体経済は弱く、新興国の成長も鈍化するとみられたことから、コモディティ市場は下げ、さらに世界最強のコモディティ・トレーディング・ハウスのグレンコア社が株式上場(IPO)はコモディティ市場がピークに達したサインと受け取られ、売り浴びせとなった。

 これまで好調だったCTA関連のヘッジファンドが、原油やゴールド、銀価格の急落で大きな損失を出している。本日のFT誌ではロンドンのクライブ・キャピタルが原油価格急落で4億ドルの損失を伝えている。ちょうど、2007年夏にクウォンツ系ヘッジファンドがサブプライム・ショックで大きな損失を出したことを思い出す。

 グレンコアのIPOは、ゴールドマンサックスや大手プライベート・エクイティ・ファンドのIPOを思い起こさせる。パートナーシップから公開企業への転換はビジネスの在り方やトップの質を根本的に変えてしまう。緊密なパートナーシップによる事業ではニッチ市場で手厚いマージンを稼げたが、IPO後は巨大資金の運用のために政府など巨額なエンティティとビジネスを共にする「政商」になってしまう。投資銀行業務、ヘッジファンド、プライベート・エクイティ・ファンドの分野では市場参加者や市場そのものが変質してゆく。今はその過渡期にある。

 その一方で、中国やインド、ブラジルは巨大な国内市場を抱え、マーケットの凸凹はあっても、世界の経済成長は否が応でも続く。それに比べて日本にはあまりにも成長の兆しが見えてこない。震災から2ヵ月近くたつが、日本政府があまりにも非効率的な危機対応をし続けるので、海外からの投資においても日本を外すときが来るのではないだろうか。

 私の知人はアジア特化の中堅ヘッジファンドを運用している。このファンドは過去2年、二桁の利益を出している。彼は3・11の震災で日本株投資の損失を出した後はショート・ポジション(空売り)に転じた。

 多くの市場関係者は今年後半にかけて震災後の復興や需要回復を期待している。が、彼は、政府の政策からして、国内生産拠点の再建はかなり遅れるか不可能になるかもしれないと見ている。特に、輸出関連セクターのうち、工場など生産拠点を国外に再建する企業がどのくらいあるかを見守りたいとコメントしている。復興への強い懸念がある。

 折しも、ルモンド紙は米倉経団連会長の「東電には賠償責任がない、政府にこそ責任がある」という発言を取り上げ、民主党政府に対する経団連の姿勢から、政財界のちぐはぐした様子を報じた。

 民間の企業人であれば、東電はこれまで独占企業として多くの含み益があり、それを吐き出して被害者を救済するのが企業の社会的責任だと考える。トヨタなど民間のグローバル企業が自らのPL責任を政府に押しつけて賠償をせびるなど考えられない。また、賠償で資金不足になるからといって、自動車の販売価格を上げるだろうか?電気料金を上げる前に、消費税を上げる前に、復興税を施行する前に、やるべきことがあるはずだ。

 政治家は法律を創るために選挙で選ばれる。国民のために良き法を創り、政治をするはずの政治家が規制を盾に何もしない、財界は仲間内の東電の利益を代弁し、結果、国民が全ての重荷を背負う。日本はお家芸の「モノづくり」の活力を海外に奪われ、あと1世代もたてば成長なき国家として、地震や津波など天災がなくても沈んでいく。

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