今井澂(きよし)さんは、御年77歳。半世紀以上も相場を見続けたツワモノです。ゴールデンウィーク明けの5月10日に、為替相場、アベノミクスの見通しなどについて、貴重な対談をしました。
今井さんは、国際エコノミストとして ご活躍中です。
最近『シェールガス革命で復活するアメリカと日本』を出版 されました。
ポイント1.トレンドは円安・株高
Jim O’Neill(中央)by Financial Times photos
大井: ついに1ドル百円の壁を突破しました。今井先生は、円安・株高のトレンドを読み込んでいましたが、いつまで続くのでしょうか?
今井: ゴールドマン・サックス・アセットマネジメントで活躍したジム・オニールが、ついこの間リタイアしました。彼は昨年12月に「円売り・日本株買い」を推奨しました。
自民党の政権復帰、いわば安倍ショックと黒田節が功を奏したわけです。オニールのアドバイス通りに投資をして大儲けしたのがジョージ・ソロスです。
大井: ジム・オニールといえば、親交諸国についてBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の単語を作った人ですね。ジョージ・ソロスは、40日間で10億ドルもの利益を上げたと言われています。
今井: ジム・オニールのお別れのレターでは、レンジ100−120円を予想しています。真ん中をとって110円辺りくらいでしょうか。
大井: そうなると、まだ株高が続きますね。110円を超えれば日経平均2万円近くまで上がるかもしれません。
しかし、動きがあまりにも急なので、いつまた円高に降り戻されるのかとも不安です。
今井: 円安への流れはいったん始まるとブレーキがかかりにくいものです。円安になると輸入品が値上がり、ガソリンや食品など物価が上がります。でも、給料が上がるまでには時間がかかります。
一方、株式相場が上がるときはお金がどんどん出てくるのです。昭和30年代、私がまだ駆け出しのころ、先輩の証券マンがこう言ったのです。「台風が来て大水が引いた後に、ウナギがたくさん出てくる。まったくどこにいたのかと思うほど出てくるんだよ。相場が上がるときも、今までどこにあったんだろうと思うほどお金も出てくるものだ。」
ポイント2.米国シェールガス革命とイノベーション
Shale gas well By Jeremy Buckingham MLC
大井: 今井先生は、『シェールガス革命で復活するアメリカと日本』を出版され、早くからシェールガスに注目されてきましたね。
今井: 米国では、超大型油田も見つかっています。住宅市場の回復を遥かに上回る経済規模です。
また、米国にとって中東地域の地政学的な意味が今までとは全く異なってきます。資源国ロシアも優位性を失いかねません。
日本にとってもシェールガス革命の恩恵はあります。そのひとつが、LNG運搬船。世界で現在359隻運行されているが、2014年にパナマ運河拡張工事が完成し、14万立方米級の運搬船が60~70隻、120~140億ドルの需要が見込まれます。円安のおかげで、日本の造船業界は韓国に奪われた新造船市場を取り戻す大チャンスです。
シェールガス革命と同時に、米国では3Dプリントなどイノベーションが始まっています。3Dプリントは、日本の工作機械や金型の優位性を脅かすでしょう。
米国では製造業が復活し、強いドルとなります。
ただし、為替相場は一筋縄ではいかないから、調整局面もあるでしょうね。
今井さんは、国際エコノミストとして ご活躍中です。
プロファイルは以下のサイトをご覧ください。
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また最近『シェールガス革命で復活するアメリカと日本』を岩波書店サービスから出版 されました。