今回のツワモノは、若き地政学者として大活躍中の奥山真司さんです。
奥山さんは、日本の高校を卒業後、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学に留学し、地理学科および哲学科を卒業。その後、英国レディング大学大学院戦略学科で修士号及び博士号を取得。
テーマは、「復活する地政学!」
シェールガス革命の地政学的な意味についての対談をお楽しみ下さい。
ポイント1.シェールガス革命でアメリカの一人勝ち
大井: 前回のツワモノ・ブログで今井先生も指摘されましたが、シェールガス革命が世界の戦略図を塗り替えることになりそうです。地政学の点からどう考えたら良いでしょうか?
奥山: 今まで困難であったシェール層からの石油や天然ガスの採掘が可能になりました。これは世界の既存の秩序を大きく変える大事件です。
古い堆積地層のある、ほとんどの大陸にはシェールガス資源が存在するのですが、
アメリカなどにしか、掘削、生産技術がありません。これによって、アメリカは
世界最大の産油国になることが目前です。
これで石油と天然ガスの輸入大国から輸出大国に変わるのです。アメリカの貿易収支は黒字に転換することでしょう。
また、安い資源があるわけですから、世界中に散った工場を戻して、製造業の拠点としても復活し雇用も生まれます。
税収が上がるわけですから、財政も好転することが可能となりました。もともと、先進国で唯一人口が増加している点、
世界一の経済大国である点、
世界一の軍事大国である上に、
このテクノロジーで資源大国になり、
貿易赤字と財政赤字の双子の赤字が解消するのです。
なんとも羨ましいことです。
大井: 日本とは真逆ですね。
奥山: 日本は、人口減少に加え、昨年までの円高によりデフレは継続しています。
3・11以降の原発停止により、日本における天然ガスの価格は米国の7倍であり、
原発停止のために足下を見られ、高い石油を買わされ続けています。
日本は相変わらずの資源輸入大国です。原発を停止している現在、電気代の上昇で大きな問題を抱えています。
来年から予定されている増税となると、電気代という第2の税金はすでに上昇しているわけですから、パン屋やクリーニング店などでも大変なコストプッシュです。海外へ進出したメーカーの拠点は、もはや国内に戻って来ないでしょう。
つまり戦略的に考えると、日本が他国をコントロールためのカードが少なくなってきたという認識がまず必要になります。
ポイント2.日本独自でシーレーン防衛か?
大井: 米国が産油国との関係を薄めて中東から撤退するのは目に見えています。同時に、日本は中東に石油を頼っているので、シーレーンをどのように守るのかが致命的な課題になりますね。米国に変わって、日本独自でシーレーン防衛が必要になるかもしれないのですか。
奥山: まさに、地政学が求められる時代になりました。米国にカネを払うのか、または、自前の軍を中東まで派遣できるように、法整備して対応するにせよ、予算はこれからさらに必要になります。
大井: 日本が軍事予算を増やすと財政赤字がさらに膨らみ、金融リスクが膨らみます。
中国も経済成長を続けるためには、同じように中東の石油が必要ですね。
奥山: 中国が海洋進出を狙っている以上、南シナ海、東シナ海以外でも、日本との激突が予想されるポイントが出てきます。日本に入ってくる石油ルートをはじめ、これから地政学的知識が必要になってきます。
なぜ地政学の知識が必要なのでしょうか?それはテクノロジーによって変化する資源の運搬ルートに対応できなかった大国は、すべてが没落していっているからです。
古くはベニスから明朝、そして近代に入ってからはオランダやイギリスなどがこれに当てはまります。
シェールガス革命で天然ガス価格が暴落したロシアが、日本にすり寄ってきました。
また、シェールガスの安価なLNG増産できるというテクノロジーからLCC革命が相乗りして、国内では本格的に鉄道から飛行機の時代になりそうです。
安価な輸送コストになるとデフレはさらに継続する可能性があります。国際情勢から目が離せない現代になりましたが、ここでもテクノロジーによる地政学的な変化を見ていかないと大変なことになります。
大井: 地政学は、国際金融そして産業構造の変化を読み解くうえで、大事な学問ですね。そして、今の安倍外交では、まさに「中国包囲網」を意識しています。日本が二つの大国、米中のはざまでどのように生き延びるか。そこで経済的な繁栄を続けなければ、円の経済圏は存続できなくなります。こうした大局観にたった危機意識を持って、各国とのつきあいを決定していかなくてはなりません。
地政学が実践にどのように役に立つかについては、奥山さんのブログや著書をご覧下さい。
『世界を変えたいなら一度”武器“を捨ててしまおう』(フォレスト出版)は大人気です。
http://geopoli.exblog.jp
http://www.realist.jp/geopolitics.html