グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。
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ヘッジファンド情報

失われた信認

先週あたりからグローバル投資家が中国株を売り進んだ。過剰流動性で膨らんだ株式バブルが崩壊に向かうとき、AIIBを主導し、人民元の国際化を目指す中国がマーケットにどう対応するか、その能力を見極めるリトマス紙となったようだ。現時点では当局の介入で、一時的に相場が下げ止まったように見える。短期的には下げた分の半分ほどは戻るかもしれないが、グローバル投資家の一部は「これで中国市場の信認はなくなった」と話しており、次に底が抜けたときには売り圧力をいっそう強めることになりそうだ。…

ギリシャと中国 高まる金利変動リスク

金融市場は、ギリシャ危機と中国株式市場のバブル破綻への懸念で揺れ動いている。CNBCキャスターのロン・インサナ氏は、ギリシャがユーロから離脱しドラクマに戻れば、第一次大戦後のドイツのようなハイパーインフレと大不況に見舞われるとコメントしている。さらに、中国株式バブルは過去3週間で30%近く下落し、時価総額3兆ドルの損失はギリシャのGDPの10倍にあたり、ちょうど1989年の日本のバブル崩壊の時のようだと評している。…

どこまで続くか 円安・株高

年初から外国人投資家が1兆円を超えて日本株を買い越し、国内個人投資家が売り越している。特に、外国人投資家は4月以降、積極的に日本株を買っている。その背景には、基本的に原油安・ドル高がある。多くのヘッジファンドは米ドルロング、米株ショートに加え、円ショート・日本株ロングのポジションを取り、これが円安・株高の主要因と思われる。特に、5月21日から円安トレンドが際立っている。 FT紙(6月2日付)”Japanese currency pierces…

高まる金利変動リスク、ヘアカットが危機の引き金に

2013年5月、バーナンキFRB議長(当時)の「テーパリング発言」で国際金融市場が大きく下げた。リーマンショックの直後、金融恐慌を避けるために米国をはじめ多くの中央銀行が大々的な金融量的緩和(QE)に踏み切った。テーパリングとは緩和策を徐々に縮小し、正常に戻すことを意味したが、当時は実行に移されなかった。…

二番底の恐怖 No more war!

先週のマーケットでは、FRBの政策決定会議(FOMC)でイエレン議長がゼロ金利解除のタイミングをどう表現するかに注目が集まった。利上げの時期までを示唆する「忍耐強く」という文言は取り外されたが、景気動向を慎重に見極めるFRBの姿勢がマーケットに伝わった。…

原油下落とスイス・ショック

2014年6月13日に原油価格が下落し、同時に世界の投資マネーが米ドルへ流入し始めた。そして、その翌週、6月20日からロシアルーブル売りが始まった。「原油下落+米ドルへのマネー流入」は今も続いている。 中東産油国が生産体制を維持することから、原油下落傾向は今年も続く見通しである。 原油下落で産油国の歳入が減り、じわじわと国民経済を弱めて行くだろう。…

新手のCDS取引とハゲタカ・ヘッジファンド

2015年新年おめでとうございます! 本年は戦後70年と節目の年となりそうですね。さっそく、本題に入ります。 クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)については前にも「金融危機のトリガー」となりうるデリバティブ取引で、かなりコワい存在だと書き留めた。 ウォールストリート紙(昨年12月23日付)「Credit-Default Swaps get Activist New…

黒田サプライズの後に来るか、「第2次マネー敗戦」 – 山広恒夫記者へのインタビュー –

去る10月31日に黒田日銀総裁はサプライズのQQE(質的・量的緩和)を行いました。その影響についてFRBウォッチャーとして著名なブルームバーグ山広恒夫記者(ワシントンDC)にインタビューしました。 大井: 山広さんはブルームバーグに「米国から見た危うい日本銀行-バブルの上の雲…

国際金融市場のハイライト

米国市場の動向 9月16−17日に行われたFOMC(連銀政策決定会議)でイエレン議長は、「かなりの期間(for a considerable time)ゼロ金利維持」としたが、金利引き上げが早まる可能性をも示唆した。金利上昇の期待感からこの1ヶ月は米ドルへの資金流入からドルが相対的に強くなっている。…

米軍のイラク空爆開始  金融市場への影響は限定的か?

先週一週間も地政学リスクが金融市場を覆った。今後の影響を考え、グローバルマネーは、リスク回避に動いている。 今後の見通し (1)欧米のロシアに対する経済制裁から、脆弱なユーロ圏経済に追い打ちをかけるような影響が出そう。欧州中央銀行(ECB)はさらなる緩和策に動き、ユーロ安が見込まれる。 (2)さらに、ロシア・リスクから、この一週間、ロシアとの密接な貿易国のノルウェーとスウェーデンの株式からグローバルマネーが流出している。…

グローバルマネーはユーロからアジアへ、有事に備えた危機管理体制も必要

第一次世界大戦が始まって百年目となる8月5日、ヨーロッパ各地で王族たちが集合して記念式典が行われている。この1ヶ月ほどのグローバルマネーの動きをみると、欧州とロシアには弱気である。株式投資では、資金はユーロ圏から流出してアジア株(インド、台湾、タイ、中国、香港、シンガポール)へと流入している。 …

Q1 長期投資と安定運用の極意とは?

A. ① 金融とは人助け、投資運用とは次世代へ希望をつなぐことであり、勝たなくてもいいから負けない、負けなければ生き残れる ② 短期的な大きな利益よりも、目標リターンに向かって安全な運用を優先する ③ 資産と運用における分散、全体の流動性に関わる管理をしているオルタナティブ運用ポートフォリオをつくり、絶対値の収益を確保する ④ …

今後の日本株の見通し 今井澂(いまい きよし)氏インタビュー

今井澂氏は、50年にもわたり日本経済をウォッチされ、「伝説の当たり屋」と呼ばれています。つい最近『日本経済 逆転のシナリオ』(フォレスト社)を出版されました。梅雨の合間に、帝国ホテルにて、今後の日本株の見通しについて伺いました。 ポイント1.PKO(Price Keeping Operation) からPLO(Price Lifting Operation)へ 大井: …

潮目の変わる時 鬼気迫る危機の予感

この数日間、これまでの様相が一転し、だいぶ事態が異なって来た事を感じます。 ・   18日FT記事 “Signs of inflationary pressure spark sell-off in US Treasuries” いきなり「インフレ懸念」のヘッドラインが目に飛び込んできました。5月の米国コア消費者物価指数(CPI)インフレ率が2.0%に上昇し、10年物米国債の利回り4ベーシスポイント上昇しました。…

国際金融市場の三つの悪夢

悪夢その一 再び信用バブル 日米欧の量的緩和とゼロ金利政策のおかげで、マーケットには投資資金がだぶつき、少しでも高い収益を求めて駆けずり回っています。欧州にはデフレ懸念があり、信用市場は過剰に膨らんでいます。 まず、米国ではCLO(ローン証券化商品)販売高が年初から420億ドルを超え、年末までに1000億ドルに達するとみられ、信用過剰がピークに達した2006年のCLO発行高を超える勢いです。さらにCLOをさらに証券化した「CLO…

“Sell in May and go away” は正しいか?

5月13日に、SAILヘッジファンド・アクセスセミナーを開催しました。講師の小松啓一郎博士からは、ウクライナや中国など国際情勢について貴重な現場報告がありました。90分に及ぶ講演内容をすべて網羅できませんが、私が気づいた点をまとめます。 プーチン大統領は国内の人気取りに注力。彼はチェスプレーヤー(先を読む戦略家)ではなく、寝技が得意な柔道家(その場を勝てばよい)である。 ロシアの核ミサイルのほとんど部品がウクライナ製であり、しかもウクライナの独自技術による。…

BRICsのデカップリング

マーケットは、FRBの2%インフレ目標が達成され、量的緩和縮小(テーパリング)は年内に終了すると織り込んでいます。そして、米国の本格的な金利上昇は来年後半と見ています。しかしながら、先週に引き続き、ウクライナと南シナ海では緊張が高まり、事態はしばらく流動的です。こうした地政学リスクをどう受けとめ、プライシングするかについて、マーケットの動きはまちまちです。 …

リスク・オン状態のグローバルマネーはどこへ?中国・日本・米国からは流出、ギリシアやイタリア、スペインの国債やロシア株へ

大海に潮の満ち引きがあるように、マネーの流れも金融政策で変わります。現状は、満ち潮でマネーが市場にじゃぶじゃぶ溢れ、市場参加者にとって流動性が担保され、積極的にリスクを取れる(リスク・オン)環境にあります。 市場参加者のなかでトレンドの先端を行くのは、瞬時にリスク・オンとオフの行動をとれる少数精鋭のヘッジファンドです。彼らはオンとオフをスイッチのようにと切り替え、行動します。今のような市場環境はヘッジファンドにとって絶好の狩場です。…

ロシア金融危機に沈んだもの

1998年に起きたロシア通貨危機によってマーケットはどう動いたのか、1990年代に大きく拡大したヘッジファンドはどうなったのか。当時の、実際のトレーダーに焦点を当てたコラムです。

地政学上のリスク・オンとリスク・オフ

この一ヶ月、国際金融市場の動きはキナ臭い。国際金融市場という大海原には、資金を必要とする民間企業や政府、そして各国中 央銀行や政府系ファンドのような大きな機関投資家(加えて我々のような小さな個人投資家)、そして、両者を仲介する銀行や証券など金融機関が生息する。…

金融危機に乗じるハゲタカ・ファンドの役割

1998年のロシア危機は、多くのヘッジファンドを破滅させた。しかしその裏で破綻証券へ投資して儲けたヘッジファンドもある。グラマシー・アドバイザー社もそのひとつである。こうしたヘッジファンドは、死んだ獲物をついばむ「ハゲタカファンド」と称され、どこかマイナスのイメージが伴う。

私募金融市場とヘッジファンドが拡大する米国の資本市場の歴史

「1998年ロシア通貨危機で起きたことと、それまでの流れ」を5回シリーズでお送りします。今回は第2回です。 世界の金融市場がQEバブルで涌く中、確実にバブルの終わりはせまってきています。1998年に起きたロシア通貨危機によってマーケットはどう動いたのか、1990年代に大きく拡大したヘッジファンドはどうなったのか。過去の大きな危機から、これからのマーケットがどうなるかを考える際の一助になればと思います。また、4・5は当時の、実際のトレーダーに焦点を当てたコラムです。

1998年ロシア通貨危機で起きたことと、それまでの流れ

1998年8月の終わりに、ロシア通貨危機に端を発した世界同時株安の恐怖が世界中を駆け巡った。このロシア危機の影響を受けたヘッジファンドが次々と損失を出した。ヘッジファンド業界紙MAR社によると、調査対象の155のファンドのうち、4分の3が8月に損失を出し、42のファンドが10%以上の損失を被った。